目次
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NASAにあった組織風土の問題
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コロンビア号爆発事故が起きた背景
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不祥事の共通点
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まとめ
前回は不祥事を起こした企業の事例として、ビッグモーター社の不正問題を取り上げました。
今回はNASAでの不祥事を参考にして、どんな共通点があるのかを見ていきたいと思います。
1,NASAにあった組織風土の問題
NASAは世界的に有名な宇宙開発機関ですが、その内部に組織的風土の問題があったことがわかっています。
その一例が2003年に起きたコロンビア号爆発事故です。
コロンビア号爆発事故は、アメリカのスペースシャトル「コロンビア号」が地球に帰還する際に空中分解し、搭乗していた7人の宇宙飛行士が亡くなった悲劇的な出来事です。
この事故は、打ち上げ時に外部燃料タンクから剥がれた発泡スチロールが左翼に衝突し、大気圏再突入時に熱で溶けたことが原因だとわかっています。
そのせいで大気圏再突入時に高温の空気が翼内部に侵入し、機体が分解してしまいました。
事故の原因となった衝突は、実は打ち上げ直後に観測されており、NASAのエンジニアたちはその危険性を指摘していました。
しかし、NASAの管理者たちはその指摘を無視し、コロンビア号の安全性を確認するための追加調査や対策を行わなかったのです。
2,コロンビア号爆発事故が起きた背景
なぜNASAの管理者たちはエンジニアたちの声を聞かなかったのでしょうか?
その背景には、NASAの組織的風土が大きく影響していました。
NASAでは、予算やスケジュールの圧力が高く、失敗や遅延を許されない雰囲気がありました。
また、組織内では上層部から下層部への一方的なコミュニケーションが多く、下層部から上層部へのフィードバックや意見表明が抑制されていました。
「コロンビア号爆発事故」での意思決定を検証した『決断の本質 プロセス志向の意思決定マネジメント』(マイケル・A・ロベル 英治出版)という本があります。
ここに、NASAのエンジニアでコロンビア号に関わっていた、ロドニー・ローシャの発言があります。
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「〈エンジニアは自分よりずっと高いレベルの人にメールを送ってはいけない〉と常々言われていた」
(会議の発言について)「僕にはそんなこと(強硬に主張すること)はできない。…僕は下っ端だ。…ハム議長は雲の上の人だ」
※鍵括弧内は『決断の本質 』(マイケル・A・ロベル 英治出版)より引用
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この発言からも、いかに当時のNASAの上層部と下層部に距離があったかがわかります。
さらに、NASAでは過去の成功体験から過度な自信や油断が生じており、リスク管理や品質管理に対する意識が低下していました。
これらの組織的風土の問題は、コロンビア号爆発事故だけでなく、他の事故やミスにもつながっていたといわれています。
こうした失敗を通してNASAはこの問題を認識し、その後改善に取り組みました。
3,不祥事の共通点
ビッグモーター社とNASA、2つの事例をみてきました。
両社に共通していたのは、組織風土が非常に悪かったことです。
組織が不正を助長する方向に傾いており、事件の深刻さや広がりにつながったと言えるでしょう。
ではどうしたら不祥事は防げたのでしょうか?
組織風土がもう少し正常なものだったら、きっと改善する力が働いていたはずだと思います。
仮に不正な指示が上長から降りてきたとしても、心理的安全性が確保されていれば、状況を改善しようとする社員が現れます。
そしてそうした社員が別の管理職に報告する、外部に相談するなどして、問題は発覚すると考えられます。
このように組織風土を健全なものにすることで、大きな不祥事になるリスクを防ぐことができるのです。
4,まとめ
前回、今回と、企業の不祥事を通して組織風土のことをみてきました。
心理的安全性は組織のパフォーマンスを高めるだけでなく、リスク回避にも繋がることがわかって頂けたかと思います。
取り上げたような大きな不祥事はたくさんの社員が巻き込まれることになるので、本当に起きてほしくないものですね。
本日もお読み頂きありがとうございました!